
離婚の理由は人それぞれですが、いざ自分が離婚を考えるとき、
「自分のような理由で離婚を考える人は多いんだろうか? 少ないんだろうか?」
と不安になる方も結構いらっしゃるようです。
身近に離婚を経験した友達や親戚がいる方なら相談相手になってもらうのもいいですが、周りに離婚経験者がいない場合、不安になる気持ちはよくわかります。
それでは、近年この国の離婚にはどんな傾向があるのでしょうか?
さまざまな統計調査からその実態を見てみましょう。
離婚は増えている? それとも減っている?
結論から言うと、離婚件数は「減少」しています。
たまに
「今の日本では年間3組中1組の夫婦が離婚している!」
といういささかショッキングな数字が耳に入ってきます。
しかし、それにしても…
ちょっとおかしいと思いませんか?
あなたの身の回りで、それほど離婚した夫婦は多いでしょうか?
それではこの数値について解説しましょう。
この数値は厚生労働省の「人口動態調査」に基づいています。
さて、平成29年調査結界に目を通してみましょう。
この調査によると、平成28年度は…
婚姻件数……606,863件
離婚件数……212,262件
確かにこれを見ると、「なるほど、確かに離婚件数は婚姻件数の1/3だなあ」と思われるかもしれませんしかし、この数値は、
その年に離婚した夫婦の数÷その年に結婚した夫婦の数=1/3
という単純な計算式の答に過ぎません。
つまり、その歳に離婚した夫婦=その歳に結婚した夫婦ではないので、離婚した夫婦が、いったい何年結婚生活を続けてきたのかはわかりません。
よって「日本では年間3組中1組の夫婦が離婚している」というのは正しくない評価です。
実際は、離婚自体は減少傾向にある…その理由は?
それでは正確な離婚率を見ていきましょう。
ポイントは、日本では婚姻件数そのものが確実に減少傾向にあるということです。
前に挙げたように、平成29年の離婚件数は212,262件で前年の216,798より、4536件減少しています。これに人口1000人に対する発生率を割り出すと、離婚率は1.70。前年は1.73だったため、やはり減少しています。
それに加えて606,863組だった婚姻件数も、前年度は620,531件だったため、13,668件減少。
こちらも1000人あたりの数で割り出した婚姻率は4.9。前年の5.0よりも低下しています。
実は、日本の離婚件数がピークを迎えたのは平成14年で、離婚総数は289,836組。そのときの離婚率は2.2%でしたが、その後はゆっくりと下降していきました。
ところで最も婚姻件数が多かったのは昭和47年でその数なんと1,099,984件!
第2次ベビーブームをもたらしたこの婚姻件数は、平成29年の1.8倍にもなります。
いかに近年の婚姻件数が少ないかおわかりかと思います。
このように見ていくと、離婚件数のゆるやかな減少傾向は、その母数となる婚姻件数の少なさに起因していることがよくわかります。
しかし…全体的に減少傾向にあるとはいえ、その総数はかなりのものです。
日本ではわずか、2分半たらずの間にひと組の夫婦が離婚している計算になるのですから!
離婚の原因とは何か?……妻側からの原因・夫側からの原因
司法統計には全国の家庭裁判所に申し立てられた離婚調停の原因がまとめられています。
いまのところ入手できる最新のものは平成27年度のものですので、そこから内容を見ていきましょう。
まず、妻から申し立てられた離婚原因のベスト10です。
1位 性格が合わない 19,380人(40%)
2位 生活費を渡さない 13,551人(28%)
3位 精神的に虐待する 12,282人(26%)
4位 暴力を振るう 10,882人(23%)
5位 異性関係 8,643人(18%)
6位 浪費する 5,420人(11%)
7位 家族を捨てて省みない 4,316人(9%)
8位 家族親族と折り合いが悪い 3,655人(8%)
9位 性的不協和 3,653人(8%)
10位 酒を飲みすぎる 3,069人(6%)
「性格が合わない」つまり、「性格の不一致」がほかを大きく引き離して1位です。
また、「生活費を渡さない」といった経済上の理由が3割近くを占めているところに、昨今の不景気や雇用状況の不安定さが表れているのかも知れません。
精神的な虐待(3位)・暴力(4位)が上位を占めていることも見逃せません。
このなかでは、「異性関係」は5位にランクインしています。
では、夫から申し立てられた離婚原因のベスト10を見てみましょう。
1位 性格が合わない 10,900人(61%)
2位 精神的に虐待する 3,322人(19%)
3位 家族親族と折り合いが悪い 2,656人(15%)
4位 異性関係 2,637人(15%)
5位 性的不協和 2,326人(13%)
6位 浪費する 2,209人(12%)
7位 両親との同居に応じない 1,764人(10%)
8位 暴力を振るう 1,505人(8%)
9位 家族を捨てて省みない 1,127人(6%)
10位 病気 913人(5%)
こちらも「性格の不一致」が群を抜いて1位ですが、妻からの申し立てに比べて「性格が合わない」が占める割合が圧倒的です。
精神的な虐待が2位(19%)なのは少し意外ではないでしょうか。また、妻側の「家族親族と折り合いが悪い」が8位(8%)なのに対して、夫側の順位は3位(15%)というのも着目すべき点です。
家族観の違いは男性にとって大きな問題であるようです。
ちなみに「異性関係」は4位ですが、妻からの申し立てが18%であるのに対し、夫側は15%となっています。
なぜ、「性格の不一致が起こるのか?」…結婚5年以内離婚が増えている。
離婚原因として「性格の不一致」が妻・夫ともにトップに挙がっていることは上で述べました。
厚生労働省の調査ではここ何年もの間、「結婚後5年以内」に離婚している夫婦が多くなっているという結果が出ています。
この「5年以内」にはどんな内情があるのでしょうか。
スピード離婚
「性格の不一致」は近年話題になっている「スピード離婚」の原因でもあります。
どれくらい早く別れれば「スピード離婚」なのか、という定義はありませんが、結婚後1年以内に分かれてしまえば、「スピード離婚」と呼べるでしょう。
厚生労働省の「人口動態調査」によると、ここ数年で1年未満に離婚するケースは離婚の全体件数の2%~6%で推移。これらの多くは、離婚原因ランキングにも現れているように「性格が合わない」ことが原因と考えられます。
スピード離婚の原因として考えられるのは、
・結婚までの交際期間がとても短かった(お互いのことをよく知らなかった)
・お互いの結婚観・価値観の相違
・夫婦各実家との折り合いの悪さ
・借金などの隠し事が発覚した
・異性関係(元カノや元カレとの関係精算不足)
などです。
できちゃった婚(授かり婚)
平成22年の厚生労働省の調査によると、できちゃった婚(いわゆる授かり婚)の割合がとても高くなっていることがわかりました。
・15~19歳 81.7%
・20~24歳 58.3%
・25~29歳 19.6%
・30~34歳 10.9%
・35歳~ 10.3%
・全体平均 26.3%
なんと10代の約8割、20代前半の約6割ができちゃった婚で結婚しています。
全体で見ると実に4分の1の夫婦ができちゃった婚です。
まあ、長く交際していたカップルの場合、子供を授かることが結婚に踏み切るための動機づけにもなるので、「できちゃった婚」自体は何も問題ありません。
ただ、19歳までに結婚した夫婦の離婚率は非常に高く、平成17年に離婚した夫婦の約75%が20歳未満の年齢層にあたります。
次に、離婚率が高いのが20歳~24歳までの夫婦。
そうなると、できちゃった婚をした若い夫婦の離婚率はかなり高い、と言わざるをえません。
できちゃった婚をした離婚夫婦の離婚原因として考えられるのは、
・お互いについてよく知り合う時間がなかった
・結婚に対する心の準備がお互い、もしくは片方に欠けていた
というものも大きいですが、
・結婚生活を維持していく経済的な持続力が足りなかった
という金銭上の問題も多いようです。
子どもが生まれている限り、離婚にあたってはどちらが子どもの親権を取るか、養育費はどうするのかという問題が発生します。
離婚しないに越したことはありませんが、離婚を決断した場合は法律の専門家からのアドバイスが必要になります。
産後クライシス
「産後クライシス」とは夫婦がはじめての子どもができてから2~3年くらいの間に、一気に仲が悪くなってしまう現象のことです。
出産は女性のホルモンバランスを大きく乱す一大事です。
身体的な変化に加えて「産後うつ」と言われる精神的な変調、または育児で一気にやることが増えることなどから、母親は不安定になりがちです。
些細なことで言い争いになったり、妻がふさぎ込んでしまったり、妻の大変な気持ちを理解できない夫がへそを曲げてしまったり…
ここで夫がしっかり妻を支え、育児や家事でもしっかりと協力し、支えることができたら言うことはないのですが、そうならない場合があります。
考えられるケースとしては
・妻とのトラブルが絶えない家庭を避けて、夫が浮気する
・夫の理解が得られない妻が、理解者を求めて浮気する
・夫が、もしくは妻が親としての役割やモラルを放棄する
・妻が子供に夢中になり、夫が疎外感を感じる
といったことです。特に、親が親としての役割を放棄するような事態は、子どもの虐待など最悪の事態につながりかねません。
せっかく子宝に恵まれて幸せいっぱいだったはずの家族がこんな形で壊れてしまうのは悲しいことですが、場合によっては「離婚」の道を選ぶほうが得策なことも。
この場合でも親権や養育費の取り決めにあたって、法律の専門家の助言は不可欠です。
離婚する年齢で一番多いのは、男女ともに30歳~34歳
厚生労働省の平成28年度調査によると、離婚した夫婦の全体216,805組に対し、結婚後5年未満で離婚するケースは68,011組と最も多く、全体の31%を占めています。
5年以内で離婚する夫婦の内訳は、
結婚後1年未満で離婚 13,156組(5年以内離婚中 19%)
結婚後1年~2年で離婚 15,330組(5年以内離婚中 23%)
結婚後2年~3年で離婚 14,500組(5年以内離婚中 21%)
結婚後3年~4年で離婚 13,299組(5年以内離婚中 20%)
結婚後4年~5年で離婚 11,726組(5年以内離婚中 17%)
となっており、結婚後1年~2年で離婚する夫婦の割合がやや高くなっています。
また、年齢別に見ると離婚年齢は男女ともに30歳~34歳の割合が一番多く、女性の場合はこの年齢での離婚率の高さが顕著です。
近年、男女ともに結婚年齢が高くなっていますが、近年の女性の平均結婚年齢は29歳とされ、それに加えて結婚5年以内に離婚する夫婦が多い事情をみると、この年齢で離婚する女性が多くなるのも頷けます。
結婚1~2年で「性格の不一致」を理由に離婚する夫婦が多いのは事実ですが、ひとくちに「性格の不一致」といっても、それがそのまま離婚の原因となるケースはまれです。
性格の不一致や子どもの育児に関する食い違いが亀裂となり、夫婦関係がどうしようもなくこじれてしまったり、パートナーの浮気がはじまったりするのに約5年…
もし結婚前にお互いをよく知ったり、結婚に対する思いを共有したりできなかったとしても、結婚してからは夫婦でじっくり話し合う時間を持つことが大切でしょう。
しかし、話し合いもままならないほどに夫婦関係が悪化してしまったら、相談できる第三者を持つことは有効かも知れません。友人やカウンセラーなど、相談の内容によって相談相手も変わります。離婚問題を扱っている法律家も、その選択肢の一つです。
熟年離婚
もう一つ、気になる流れがあります。
平成28年の厚生労働省調査で、結婚期間5年以内の夫婦の離婚率が非常に高いことは、前段で述べました。
では、結婚期間5年以上の夫婦の離婚数はどうなのでしょうか。
・結婚期間5年~10年未満 44,393組
・結婚期間10年~15年未満 29,533組
・結婚期間15年~20年未満 22,986組
・結婚期間20年以上 37,604組
なんと、離婚した夫婦の全体216,805組に対し、結婚期間20年以上経って離婚する夫婦は全体では17%ですが、5年以内で離婚する夫婦に次いで多くなっているのです。
いわゆる「熟年離婚」はその名前のせいで、初老に差し掛かる夫婦の離婚のように思われがちですが、実はその結婚期間の長さによって定義されます。
一般的に結婚期間20年を過ぎる夫婦が離婚することを「熟年離婚」と呼びます。
全体的な離婚件数はゆるやかな減少傾向にありますが、そのなかで伸びているのが「熟年離婚」です。昭和の終わりには20,000件前後だった離婚件数が、ここ30年で17,000件ほど増えていることは注目に値します。
熟年離婚の原因
長年連れ添ったのになぜ…と疑問が湧く「熟年離婚」ですが、その原因はまさに「長年連れ添った」からこそ、発生しているものが多いようです。
以下が代表的な「熟年離婚」の原因です。
・これ以上、もう一緒にいたくない
・性格の不一致や価値観の違い
・過去に受けた精神的苦痛やDV
・過去の不倫・浮気(または現在進行中の)
・それぞれの両親の介護問題
性格の不一致、価値観の違い、過去のDVや暴力や浮気など、「熟年離婚」の場合はそうした出来事に長年耐え続けてきた夫婦が、子供の独立などを期に一気に不満を爆発させた結果が多いようです。
また、両親の介護問題などは高齢化社会ならではの理由と言えます。
もともと、「熟年離婚」は妻から夫に切り出すケースが主流でした。
夫の退職金が出るのを見計らって離婚を切り出す「計画離婚」もあります。
夫の財産が一気に増えるのを見計らって、これまでの不満をぶつけ、慰謝料を請求するわけです。
しかし近年、夫から妻へ「熟年離婚」を持ちかける事例が増えており、近年では「熟年離婚」全体の約4割が夫からの訴えかけによるものになっています。
夫から妻へ「熟年離婚」を切り出す原因としては、
・定年後に妻の日常の生活のことをよく知るようになり、生活態度に不満を感じた
・自分が本当に「愛されているのか」不安になり試したくなった
・男性ホルモンの低下により妻への愛情が冷めた
など、少し言葉は悪いですが…身勝手で曖昧なものが多いようです。
また、近年はコンビニエンスストアで簡単にそれなりのおかずになる料理を買うことができますし、いざとなれば家事代行サービスを頼むこともできます。
男一人でも暮らしていけるんじゃないか?…と思えてしまうほど日常生活の利便性が向上していることも、夫が「熟年離婚」を切り出す原因となっているのではないか、と見られています。
また、妻・夫ともにスマートフォンの普及などから、新しい出会いを求める場が増え、それぞれが新たに不貞をはじめるハードルが下がったことも、理由として考えられます。
じっくり話し合うことが大切
夫婦としての関係があまりにも長く続くと、生活に倦怠感が出てくることは考え得ることです。そして、夫婦というものはあまりにも近い存在であるため、長い夫婦生活のなかで本気で話し合い、本音でぶつかり合う機会がなかなか持てない、ということもあります。
熟年離婚に至るまでの経緯は、それまでの結婚生活でいかに夫婦が信頼関係や愛情関係をきちんと構築してきたか、ということに大きく影響します。
夫婦のいずれかが離婚を口に出したときは、とりあえずお互いがよく話し合うことが大切です。
夫婦同士で話がまとまらないときは、夫婦の問題を取り扱う専門のカウンセラーもいます。
専門知識を持つ第三者を挟んで話すことで、解決の糸口が見えてくることもあります。
それでもやはり離婚という道を選ばざるを得なくなったときは、特に妻のほうに今後の収入の不安が生じます。
2007~2008年の法改正により、離婚後、夫の年金を分割して受給できる年金分割制度ができました。また、慰謝料が発生する場合に加え、財産分与でそれなりのお金を得ることができます。
これらの金額に関しては、弁護士など法律の専門家が相談に乗りますので、一人で悩まずぜひともご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ご自分の状況に当てはまるケースはありましたでしょうか?
最初に述べたように、離婚総数自体は減少傾向にあるとはいえ、時代や社会情勢に応じて離婚のかたちはますます多様化していると言えます。
もし、あなたが離婚を考えている場合、
「こんなことで離婚を考えているのは、わたしだけじゃないだろうか?
ほかにももっと苦労している人がいるのに、こんな理由許されるだろうか?」
と考えているなら、心配は無用です。
あなたが離婚を考えるまで悩み抜いたのには、それなりの理由があるはずです。
それに、悩みというものはもともと個人的なものですので、あなた自身が苦しんでいるなら、それが他人と比べてそれが深刻かどうか、考えたところでどうなるというのでしょう?
あなたが抱えている悩みも含めて、法律や調査のプロがしっかりと受け止めます。
心強い味方がいることを、どうか忘れないでください。